独立行政法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部主催
2005年度「宇宙学校」レポート1 inTOKYO

皆様、お久しぶりです。
去年に引き続き「宇宙学校」が開催されました。
今年は今までと授業の流れが異なりました。
参加人数は去年と同じくらいです。去年と同じく寒い晴れの日でした。
今年は宇宙学校のポスターが凝っていて、デザインを担当されたのは
毎年宇宙学校の講師として参加されている黒谷明美先生です。

宇宙に夢中!う〜ん、いいですね。(笑

さて、開講の始まりは去年と同じく、
宇宙科学研究本部の鶴田浩一郎本部長のご挨拶から始まりました。


今回校長を務められたのは、國枝秀世先生です。



テーマ☆ロケットと惑星探査

「宇宙ロケット」 担当講師:清水幸夫先生



まず、私は青く光る地球の大気層が映っているこの写真がとても好きです、と
先生は話しておられました。遠くに見えるベージュ色の物体は、地球の衛星、月です。

この大気層によって地球は宇宙から守られているのです。

「ロケット」と言えば、日本ではM-VロケットやH-UAロケットがまず思い浮かぶので
はないでしょうか?宇宙やロケットに興味のある人は、スペースシャトル、アリアンロケ
ット、タイタンロケット、アトラスロケット、ソユーズロケット、長征ロケットなどの
名前を上げるかもしれません。

ロケットは、イタリア語で「ロケッタ(筒)」という言葉が花火の事を指したものとし
て歴史上初めて紹介されました。1379年の事です。遡って、1232年に北宋とモンゴル
の戦いに矢と火薬を組み合わせた武器が使われ、「火箭(カセン)」と呼ばれていました。

その後、幾世紀の後の1926年に、米国のロバート・H・ゴダードが液体酸素/ガソリンの
組み合わせの液体燃料ロケットの発射実験に成功しました。

1942年にはドイツ宇宙旅行協会のウエルナー・フォン・ブラウンがA-4型3号機の打ち
上げに成功し、近代ロケットの礎を確立しました。この機体には、慣性誘導装置やターボ
ポンプが導入され、まさに現代のロケットの原形と言って良いでしょう。
1950年代に始まる現代までのロケットの歴史は、ソ連の「スプートニク」の打ち上げ、
「ヴォストーク宇宙船」による有人宇宙飛行成功、「アポロ11号」による人類初の月着陸、
スペースシャトルの登場、火星や木星などの太陽系惑星探査、国際宇宙ステーションの
建設、と確実に宇宙研究開発が進められています。
今年になって「高度100km以上の宇宙に有人機を続けて2回打ち上げる」という賞
「アンサリX賞」に米国のスペースシップ-1号が挑戦し、
第一回目の飛行に成功しました。

 スペースシップ1号の写真
 

リンドバーグがスピリッツ・オブ・セントルイス号で大西洋横断の「オルディング賞」を
獲得したのをきっかけに航空機が飛躍的な発展を遂げたように、有人宇宙飛行も
「誰でも宇宙を体験できる時代」に近づきつつあります。
ところで、SF映画の「スターウォーズ」やアニメ「宇宙戦艦ヤマト」などでは宇宙空間を
自由自在に飛び回る宇宙船や宇宙機が描かれています。これらのロケットエンジンは
どのようなものでしょうか? 実は、宇宙研が昨年5月に打ち上げた小惑星探査機
「はやぶさ」には、探査機を宇宙空間で加速したり、減速するためのイオンエンジンが
搭載されています。その他にもプラズマエンジンや光子力ロケットや原子力ロケットな
どの研究が行われています。人類が地球から飛び出して宇宙空間を自由に飛び回れる
飛行船が出来たら、どんなに素晴らしいでしょう。

清水先生、ありがとうございました。

宇宙科学研究本部ISASニュース「科学探査機用イオンエンジン」の紹介


「はやぶさの挑戦」〜太陽系の化石を持ち帰る 担当講師:矢野 創先生



私たちが住む惑星、地球は、今から45,6億年前に太陽系の他の仲間と一緒に生まれまし
た。太陽系には地球のような惑星や月のような衛星だけではなく、太陽の近くで尾を
伸ばすほうき星や、童話「星の王子様」でも知られる小惑星のような「小天体」が
何十万個も発見されています。


これらはどんな材料から誕生し、今のような姿に成長していったのでしょう?
地球の表面は地震や風や波によって常に変化していますが、塵が合体した過程の熱を
あまり溜め込まなかった小天体は、誕生当時の情報を比較的よく保存している
「タイムカプセル」だと言えます。
小天体のかけらは隕石や1ミリより小さな宇宙塵として、今でも毎年数万トンも地球に
降り注いでいます。生命の基本ブロックであるさまざまなアミノ酸もそれらに豊富に
含まれています。一方では、過去に小天体が何度も地球に衝突し、約6500万年前の恐竜
絶滅に代表されるような、地球の激変を引き起こして来たようです。つまり、小天体は
地球上の生命の起源と絶滅にも関わって来たのです。
小惑星研究の土台は、それぞれ数万に上るデータベースを抱えた、望遠鏡による
小惑星観測と隕石、宇宙塵試料の物質分析です。しかし、地球上で集められた隕石、宇宙塵
は、ほとんど、どの天体から飛んできたのか分かりません。そこで、探査機を使って特定の
小惑星から試料を地球に持ち帰れば、観測結果と分析結果を「橋渡し」出来ます。
これこそ、日本が昨年5月に打ち上げた、世界初の小惑星サンプルリターン探査機
「はやぶさ(MUSES-C)」が担う最も重要な科学的使命です。

今も太陽光を電力に換えてエンジンを動かし、惑星空間を旅する「はやぶさ」は、来年の
夏に東京タワー二本分に満たない小惑星「イトカワ(1998SF36)」に到着します。


探査機はこの小惑星に4ヶ月滞在して、表面の地形を測ったり、主な元素や鉱物を
調べます。その後、試料採集に挑戦します。探査機から伸びた1mの円筒が小惑星表面に
触れた途端に、弾丸を撃ち込みます。表面が砂なら舞い上がるし、岩石ならかけらが
飛び散るので、それらを採集してカプセルにしまいます。


カプセルは、2007年夏にオーストラリアの砂漠に軟着陸します。回収された試料は日本
に運ばれ、部門ごとに選ばれたトップ研究者で作る「全日本チーム」が初期分析を行い
ます。その後、試料は世界中の研究者に配られ、様々な角度から詳しく分析されます。
「はやぶさ」が確立するサンプルリターン技術は、次世代の太陽系探査を担う大黒柱の
一本になるでしょう。日本はすでに、「はやぶさ」に続く小惑星サンプルリターン計画を
検討中です。月、火星、彗星などのサンプルも地球に運ばれてくるようになるでしょう。
「はやぶさ」は新時代を切り拓く第一歩なのです。

矢野先生、ありがとうございました。

宇宙科学研究本部サイト「はやぶさ」紹介


編集者:by緋月 

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2005年2月25日公開
    

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