独立行政法人宇宙航空研究開発機構 宇宙科学研究本部主催
2005年度「宇宙学校」レポート2 inTOKYO


テーマ☆宇宙と生命

「太陽系外の惑星系を探る」 担当講師:村上 浩先生



私たちが住む太陽系は、天の川銀河系に属しています。天の川銀河系は、
太陽と同じような恒星が千億個も集まって出来ている星の集団です。
これらの星ぼしは、地球や木星のような惑星を持っているのでしょうか?
そこには生命も存在するのでしょうか?

最近10年くらいの間に、100個を超える恒星の周りに惑星があることが分かって
きました。恒星の周りを惑星が回る事で、恒星自身も少しだけ揺れるので、
惑星が在る事が分かるのです。

最初は地球よりも何百倍も重い木星クラスの惑星しか見つけられませんでしたが、
最近では地球の20倍より小さな惑星が在る事も分かるようになりました。
ただ、これらの惑星たちは恒星のすぐ近くを回っていたりして、私たちの太陽系とは
様子が違う惑星系が多いという、ちょっとドキドキする結果も出て来ています。

(太陽系外の他に見つかった恒星を中心とした惑星の軌道)
これとは別に、生まれたばかりの恒星を取り巻くガスと塵の円盤の中で惑星が作られる
様子も少しづつ分かって来ています。理論的な調べが進む一方で、地上の大望遠鏡や宇宙
望遠鏡を使って、惑星の原料である塵円盤の画像が得られたり、惑星が作られるにつれて
塵円盤が消えていく様子、また塵はどのような元素で出来ているか、などが調べられて
いるのです。




次の画像は、ハワイにあるジェームスクラークマックスウェル望遠鏡がとらえた
塵のリングで、私たちの太陽系にも同じような塵のリングがあると考えられます。


太陽系の塵のリングをコンピューターでシュミレーションすると・・
このような感じになります。
 

宇宙航空研究開発機構、宇宙科学研究本部では、早期の打ち上げを目指して、
宇宙赤外線望遠鏡を搭載したASTRO-Fの開発が進んでいます。ASTRO-Fは、
惑星が出来つつある明るい塵円盤から消えかかった円盤まで、多くのサンプルを集めて
惑星がどのように作られるかを調べます。また、さらに大きな赤外線望遠鏡を宇宙に
打ち上げて、太陽以外の恒星を回る木星クラスの大きな惑星を写真に撮ろうという計画
も検討しています。

このような計画は、地上の大望遠鏡でも進んでいて、太陽系の外の惑星の写真を
目にすることが出来るのは、そう遠い将来のことではないでしょう。
またアメリカやヨーロッパの宇宙機構を中心に、特別な宇宙望遠鏡を打ち上げて、
地球くらいの惑星まで写真を撮ったり、スペクトルを測って生命が存在するかどうかを
調べたりする計画も進んでいます。

さあ、太陽系以外にも生命は見つかるでしょうか?!

村上先生、ありがとうございました。

宇宙科学研究本部 ASTRO-Fサイトへ


さて、お次は毎年宇宙学校に参加されている黒谷先生の登場です。

「宇宙のなかの生きもの」 担当講師:黒谷明美先生

 
 
地球には、人間の他にも本当に沢山のいろいろな生きものがいます。
地球に生きものが初めて生まれて来たのは、今から38億年も前の大昔のこと。
それから現在まで、地球の生きものの生活の場所はずっとこの地球の上でした。
地球には地球独特の惑星環境があります。重力がある、地磁気がある、1日は24時間で
あるなどということです。これは38億年前からほとんど変わらないものなので、
いろいろな地球の生きものたちにとっては、当たり前、地球の惑星環境の中で生活する
ことにすっかり慣れていることでしょう。そして、地球の生きものたちは、このような
地球の惑星環境に適応し進化し続けて来ました。地球の惑星環境は、地球の生きものを
「地球生物らしく」するのにどんな役割を果たしているのでしょうか?
これを調べるには、すっかり慣れた地球から飛び出し、地球の環境とは大いに違った宇宙
で、生きものの生活が普通に出来るのかどうかを観察してみるのが一つのやり方です。



@からだの中のさまざまな化学反応は水溶液中で起こる
A急激な温度変化がない穏やかな環境
B蒸発するときに熱を吸収して体温の上昇を防ぐ
C疎水性・親水性の性質をあわせ持った物質で特別な構造を作り出す
D水は光合成の材料 

さて、ここで今話題の土星の衛星タイタンの画像に移る事にします。
地球とタイタンの大きさの違いが分かる画像です。
タイタンの直径は地球の40%くらいです。

ESA(欧州宇宙機構)のタイタン探査機プローブが今年の一月に無事にタイタン地表
面に着陸しました。(先生はあまりこのような話は得意ではない、という事なので、
代わりに編集者が少々補足します)
プローブの名前はホイヘンス(Huygens Probe)と呼ばれます。 
 
地球では水が大地に流れていますが、タイタンでは、水の代わりにメタンが流れて
います。果たしてメタンに適応する生物はいるのでしょうか?・・


編集者はどちらかというとこのような話は興味津々な方なのですが、
話を本題に戻します。

例えば、重力のある地球で、巣を張るクモは、宇宙でも巣を作ることは出来るのでしょう
か?答えは、出来ます。はじめはうまく作ることが出来ませんが、何回か作るうちに地上
で作るように出来ました。クモの糸の太さは地上よりも細くなりました。
鳥たちは、無重力でも普通に飛べるのでしょうか?メダカやカエルやイモリは重力が
なくてもたまごを生むことが出来るのでしょうか?宇宙では植物の種からどんな芽が
出てくるのでしょう?そして宇宙に行った人間はずっと健康でいられるのでしょうか?
このような問題をひとつひとつ解決していくために、沢山の宇宙実験が行われています。
「地球生物らしさ」についてもっとよく知るためです。
「地球生物らしさ」について、そして、これから地球の生きものはどんなふうになって
いくのかなどについて、考えてみませんか?

黒谷先生は、「宇宙生物学」の先生です。
地球の生物の事について、宇宙ではどうなのか?などを研究されています。
地球外生命体を研究する先生ではありませんので、くれぐれも誤解のないように。・・

以前にはNASAのスペースシャトル内で実際に行った実験で、
アマガエルを宇宙に送り出す考案をされた科学者です。
 

黒谷先生、ありがとうございました。 
編集者:by緋月 

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2005年2月25日公開
    

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